【ニュース】ネット上の「私」の写真、著作権は誰にある? 風俗嬢が怯える、ネットに残り続ける「私」の写真【リベンジポルノ】

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昨年秋に起きた三鷹ストーカー事件。元彼による殺人事件という凄惨さに加え、「リベンジ・ポルノ」という新たな被害をクローズアップさせたことで大きな話題となりました。「彼氏に懇願されて」「その場のノリで」「愛情表現」など、“撮る”ことへの抵抗感は薄れているようで、この事件を他人事ではないと思った人も少なくないのではないでしょうか。

 しかし、問題の所在は“撮る”ことだけではなく、“流出”することにもあります。恋人同士の“私的なモノ”が流出する場合もあれば、“仕事”のために撮った写真が、ネットに晒され続け、先に進めないことに悩んでいる女性たちも。

 夜の世界で働く女性たちをサポートするNPO「GrowAsPeople(GAP)」、には、最近になって、そんな「辞めたお店がいつまでも写真を掲載し続けている」という相談が増加しているそうです。

 一度、ネットに出てしまった写真――その過去をどう消し去り、次に進むのか? これは夜の世界で働く女性ばかりでなく、“撮る”ことも“ネット”も身近になった私たちが、知っておくべき防衛策。

 GAP代表理事の角間惇一郎氏が、インターネットと法律事情に詳しい「弁護士ドットコム」トピックス編集長の亀松太郎氏に、問題点の所在、法的な対処法について話を聞きました。

◆ネット化する業界で働く風俗嬢

角間:GAPは、国内に30万人存在していると言われる性風俗産業に関る女性を対象としたセカンドキャリア支援と情報発信を行っているNPOです。GAPでは今年から、風俗嬢とリベンジ・ポルノ問題の予防に焦点を当てた活動を計画していて、是非、亀松さんにお話を伺いたかったんです。

亀松:30万人と言う数字は、どうやって統計を出したのですか?

角間:店舗から各都道府県公安委員会への届け出件数は把握できています。国内には風営法をもとに届け出がある店舗として、派遣型(デリヘル)が約1万7000店、店舗型(箱ヘル)が約2000店、存在しています。

亀松:そんなに違うのですか、ほとんど派遣型ですね。派遣型と店舗型を合わせて大体2万店くらいですから、1店舗15人くらいの在籍ということでしょうか?

角間:「同時在籍」といって、同期間に2つ以上の店に在籍しているコがいたり、実際には出勤していない「カラ在籍」、過去の在籍を消さずに、ウェブ上で表示させたままでいるケースもあるため、正確な数字が出しにくいのですが、公安委員会へ届け出のあったデータと風俗情報誌のデータをもとに、エコノミストの飯田泰之さんが、『夜の経済学』という本の中で、「推定可動店舗数:約1万店舗」「1店舗あたりの推計在籍人数:29人前後」という数字を出されています。

 風俗嬢は約30万人存在していて、数字上では風俗産業のおよそ8割がデリヘル化している……。言いかえれば、風俗産業はインターネット化が進行しているわけです。実店舗がない派遣型風俗店は、もれなくウェブサイトをかなり計画的に運用しています。こうしたトレンドからか、元風俗嬢から、GAPに写真についての依頼が来るようになったんです

亀松:というと?

角間:デリヘルのウェブサイトには、ズラリと女のコの写真が掲載されています。表示順が上のほう、目立つ位置に掲載されている方は、大体、今、実際に在籍して仕事されている方です。ずっと下のほうに掲載されている方は、過去数回だけ出勤した方だったり、もうすでにお店を辞めたコだったりします。結構、古い写真も残っていたりして、昔は画質が悪かったので、過去の在籍写真がウェブ上に残っていてもあまり大きな問題にはならなかったのですが、今は写真の解像度が上がっているので、個人が認識しやすいんです。

亀松:例えばこういう写真って、海外なんかのモデルが移っている写真を適当に加工して載せている気もするのですが、実際に接触があった人の写真を載せているものですか?

角間:ほとんどのお店が実在の女の子を載せています。ウソ写真はクレームのもとですし、今はみんな解像度のいいカメラ付き携帯を持っているので、風俗店の面接前に写メを送ってたりと、撮影が気軽なんです。面接後、在籍が決まったら改めてカメラマンが本格的な撮影をし、レタッチした後、掲載となるんです。

亀松:自分の写真がこうやって出たら、自分が風俗で働いていることがバレる可能性があると少し考えればわかると思うのですが、そういう警戒心ってないのですか?

角間:それが、あまりないんです。皆さん働くために在籍しているわけですから。写真がないとそもそも仕事が入りません。風俗の仕事で何が怖いかって、その日一日、お客さんが入らないことです。在籍して出勤しているだけではお給料は入りません。ユーザーが女のコを選ぶときは風俗店のウェブサイトを閲覧し、そこから選びます。そうすると、写真がなかったり、わかりにくいとユーザーは利用しません。働くほうも、ユーザーも必要性があるため、ウェブサイトに写真を掲載するわけです。また、SNSなどの普及によって、写真をインターネット上にアップすることに抵抗がなくなっていることも一因ではないでしょうか。

亀松:昨年、アルバイト学生などがツイッターに店舗でふざけた写真をアップして問題になったじゃないですか。あれも疑問で、なぜわざわざ写真を出すのだろうと。出して見つかったら、叩かれることがわからないのかと。しかもニュースで取り上げられたりしているのに、その後も同じようなことをやる人がなぜでてくるのだろうと。

 僕はインターネットの仕事をしているので、インターネットの基本的な仕組みは理解しているつもりですが、そうやって投稿してしまう人というのは、もしかしたら写真を載せた先の仕組みをわかっていないのかなと思います。

 このパソコンの先に別のコンピューターが繋がっていて、網の目状に広がっているのがインターネットの世界です。そしてIPアドレスっていう住所があって、その住所を打ち込みさえすれば、世界中どこからでも特定の情報にアクセスできるというのがインターネットです。だから、一旦世界に投げちゃうと、世界中からアクセスできる可能性があるし、アーカイブとして残ってしまうことを特徴として持っています。それを知っていたら、簡単に情報を出したりはしないと思うのですが……簡単に情報を出しちゃうということは、彼らはそれを知らないのかなと。

角間:そうでしょうね。またウェブのサービス提供側も、説明不十分で、難しいことを考えず、ネットを使える仕組みを作ってしまっています。あるネット企業の代表は、ビジネスを拡大するにはカード課金などで、お金を払っていると感じさせない仕組みを作ることが秘訣だと言っていました。もちろんサービス提供側は騙そうとしているのではなく、使い心地を良くしようとしてるだけなのですが……結果的に使い心地が良くなるぶん、リスクを負っていることが実感しにくくなるジレンマがあるのだと思います。

◆ネットの写真の著作権と肖像権

角間:現在、僕は今、性風俗産業に関わる女性「30万総リベンジ・ポルノリスク」があると考えていて、このことが将来的に風俗嬢のセカンドキャリアに大きな影を落としそうな気配も感じています。だからこそ、今、亀松さんにお話しをお伺いしたかったんです。

 なぜなら、亀松さんはリベンジ・ポルノ問題を語るうえでの2大要素、「法律」と「ネット」その両方の世界に関わってきたという経歴をお持ちだからです。「弁護士ドットコム」に寄せられる相談事例と、「ニコニコニュース」にいたときに感じたネットリテラシーという2つの軸からの風俗嬢とリベンジ・ポルノの関係についてお話しを伺いたいと思います。

亀松:「弁護士ドットコム」で僕がやっているのは、「トピックス」と言ってニュースを作る編集者の役割なのですが、弁護士ドットコムの中には「みんなの法律相談」というコーナーがあって、登録している弁護士に無料で法律相談ができます。Yahoo!知恵袋などQ&Aサービスの弁護士版だと思っていただければいいです。

 いろんな法律相談があるなかで、今、角間さんがおっしゃっていたように、かつて風俗に勤めていて、もう辞めたのにそのお店に写真が残っていることや、写真が違う店に使われていて、お店に連絡しても消してくれなかったり、一度消してもらっても再度在籍しているかのように写真をアップされて、どうしたらいいのだろうという相談が弁護士ドットコムに寄せられています。

 そのほか、下着の写真を撮ったのだけれど、流通したら周りにバレずに消すことができるのか? という質問もありました。すでにトラブルになっていて、そういう相談がきています。

角間:風俗においては、一度消したはずの写真が再度上がっているのは、お店にとって在籍数の多さがステータスにもなるからです。関係者の誰もが写真の肖像権のことを考えることなく、バナーなどにも写真を使い出します。

 そこでひとつめの質問ですが、そもそもの肖像権は誰に帰属しているのですか?

亀松:個人の写真がネット上で勝手に使われた場合、問題になる権利はふたつあります。ひとつ目は著作権。ふたつ目が肖像権。

 著作権と言うのは、撮った人、要するにカメラマンの権利です。自分で写メを撮って送っている場合には著作権は自分のものなのですが、お店が撮っている写真だったらお店側に著作権が帰属します。

 そしてもうひとつ、とくに顔写真については肖像権が認められていて、むやみに公開されない権利があり、誰が撮ったかに関わらず、写っている本人が持っています。つまり、自分が撮った写メなら著作権・肖像権共に自分のものだし、お店が撮った場合では著作権はお店でも肖像権は自分にあるので、お店側が著作権を理由に写真を勝手に使おうとしても、削除するように肖像権を主張ができます。

 もうひとつ、弁護士ドットコムの中で弁護士が実際に答えている回答では、お店に勤めているときは仕事内容と写真が関連しているので掲載に一定の合理性があるとしても、辞めた後は仕事のために写真を掲載する理由はなくなるので、店側は削除しなければいけない、という主張ができるとのことです。

角間:夜の世界では、“辞めた”という線引きが難しいんです。女のコが店を辞めると宣言した数日後に戻ってくるケースもあります。またお店と風俗嬢の関係が、雇用ではなく業務委託契約の形を取っているので、何をもって辞めたかが判断しにくい世界なのです。

亀松:雇用関係がないにしても、タレントと事務所のような何かしらの契約関係にはありますよね。例えば、契約期間を3年と決めていて、契約書を書いているとなれば辞めるのは難しいけれど、そうでないのなら「辞めたい」と言えばそれでよく、「この仕事をしません」という通達をすればそれで辞められるはずです。

角間:つまり、写真の権利の半分は常に女の子側がもっていて、辞めるときも「辞める」と言えばそれでいいということですね? お店を辞めた後、写真が何日も残っているのであれば、肖像権を主張して消してもらうこともできると?

◆裁判での「顔バレ」リスクは?

亀松:そうです。ただ問題は、権利として主張したからと言って、実際に向こうが応じるかどうかということです。また、「弁護士ドットコム」の法律相談コーナーをみると、弁護士費用がいくらかかるか相談している人が結構います。さらに、強制するためには裁判を起こさなければならないし、裁判には“公開の原則”があるので、裁判を起こすことで周りにばれるのではないかというリスクもあります。

 ただ、裁判って実はものすごくたくさん行われていて、常に誰かが見ているかと言うとそうではありません。誰も見ていない裁判もたくさんあります。また誰かが裁判を見たとしてもその人が名前をたくさんの人にバラすとは限らない。それでも、法廷の前に行けば名前が書いてあるので、リスクはありますが。

角間:訴訟の内容も書いてあるのですか?

亀松:抽象的に書いてあります。損害賠償事件とか。風俗の女のコが写真のことで争っているというのが、パっと見てわかるわけではありません。実際に傍聴してみた結果、裁判の具体的な内容を知ることができるといった感じです。

角間:なるほど。つまり、風俗で働くコの大多数がバレたくないと思っているなか、写真のことでお店とトラブルが起き、お店が人間的な対応を取らず、法律的な対応を取らざるを得なくなったとき……常に女のコには“バレる”リスクがずっとついてまわるということですね? まさに、お店からの報復――リベンジになる、と。

亀松:そうですね。裁判などの手続きの中でバレるリスクもありますが、現実をシビアに考えると、そういうアクションを起こした時点で嫌がらせとして写真をばらまかれる可能性もありますね。

角間:訴訟を起こされた側が逆上した事例ってありますか?

亀松:いや、これはあくまで可能性の話です。僕もこういう裁判の専門家ではないのである程度推測にはなってしまうのですが、一時期、僕が3年間くらい法律事務所でアシスタントをしていたときの経験も踏まえた話をすると、弁護士が出てくると大抵の業者はそこで「はい、そうですか」って応じることが多いです。

 経営者はビジネスとしてやっているので、弁護士がのり込んできたときに徹底的に戦うというのは割に合わない。現実的に考えて、違法に写真を掲載していたとしても実際に弁護士を使ってくるコは1人か2人程度。そうなれば、とりあえず穏当なところで手を打つ業者が多いと考えられます。

 また、弁護士がのり込んできたとき、まず要求してくるのは写真の削除要求ですね。女のコとしては削除してもらった時点で、ほぼ満足すると思います。でも、実は彼女が主張できる権利ってそれだけではなくて、民法の不法行為として損害賠償請求、つまり、慰謝料の請求ができます。弁護士が攻めてきて、そこまで要求されると店側としても大きなダメージになるので、多くの場合は写真の削除を要求された時点で応じざるを得ないと考えられます。

角間:極論ですが、女のコが働く店を選択する際、在籍人数が多い店を選択すれば、万が一、写真のトラブルが発生し弁護士が出てきたときに、お店側が素直に応じる可能性が高まり、写真に関する拡散リスクが相対的に低くなるということもありうるかもしれませんね。

亀松:そうですね、僕が言っているのはビジネス的に考えてのことなので、後は経営者の方がどこまでビジネス的に、合理的に考えているかによるのではないかな。

 もうひとつ著作権の話で言うと、民事で、個人対個人でいろんな請求ができると同時に、いわゆる刑事事件になる可能性もある。裁判の世界は民事と刑事のふたつがあります。民事事件は、例えば僕が角間さんに何か要求したときに、間に裁判所が立ってやりとりをする、個人と個人の裁判です。一方、刑事事件は、何か犯罪をしたときに国家権力である警察や検察がでてきて、極端な場合逮捕され、刑務所に行く可能性があります。あまりにも悪質な場合は弁護士が告訴・告発して、それを受けた警察が捜査して、刑事裁判になるという可能性があります。著作権侵害のほかにも、本人が望んでいないのに写真を撮らされたということであれば、強要罪にあたるとして、警察が出てくる可能性もあります。

角間:なるほど。ステマのように聞こえてしまいますが(笑)、フリーランスに近い労働形態である風俗嬢は、個人的に顧問弁護士を持っておくと有利になるということですよね?

亀松:今後はそういう弁護士が出てくる可能性もありますね。風俗が店舗型から派遣型への移行をしているのと同じように、弁護士の業界も“派遣型”に移行しつつあります。以前は弁護士事務所に相談に来てもらう形態しかなかったのですが、今はインターネットに多くの情報があり、さらに弁護士の専門分野によってジャンル分けされている。しかも「弁護士ドットコム」のように最初は無料で法律相談をすることができるとなれば、だんだんそれが発展していくと、弁護士が自前の事務所を持たなくとも、全国からお客さんのニーズに応じることができます。そのため、ネット上で専門をアピールできれば、弁護士業としてやっていくことも十分可能です。

角間:まだそういう方はいらっしゃらないですか?

亀松:いや、そういう人も出てきています。それこそリベンジ・ポルノについて詳しい弁護士で、インターネット上の誹謗中傷を専門にしている人がいます。そういう人は、依頼者からのアプローチもネット中心になってきているんですね。ちなみに、「弁護士ドットコム」に登録している弁護士の中には風俗業界に強い弁護士の方もいますが、どちらかというと店舗型の案件が中心のようです。

角間:派遣型を“専門”にした弁護士さんはまだいないと。

亀松:そうですね、いないと言い切ることはできませんが、派遣型専門という方は聞いたことがない。

【亀松 太郎】

東京大学法学部卒、朝日新聞記者を3年務め退社。その後複数のネット系ベンチャー企業に関わったのち、法律事務所でリサーチャーとして3年間勤務。さらにその後、2006年からは「J-CASTニュース」のネットメディア記者になり3年半ほど過ごした。2010年からはニコニコ動画で政治・報道番組の企画やニコニコニュースの編集長を務めた。現在は「弁護士ドットコム トピックス」の編集長として活躍している。

【角間 惇一郎】

1983年生まれ。一般社団法人GrowAsPeople代表理事。建築、空間デザイナー。夜の世界で働く女性たちが抱えがちな課題である「立場を知られる事を恐れ、相談や支援を受けられない」の存在を知り、2010年から、サポートと課題の顕在化を目指して活動を始める。現在はデザイン思考による解決がテーマ。越谷市男女共同参画推進委員(Twitter : kakumaro)。GrowAsPeopleブログ(http://growaspeople.info/)

<構成/女子SPA!編集部>

ソース
http://news.ameba.jp/image/20140405-257/